サッカーの戦術には「パワープレイ」と呼ばれる戦術が存在しています。
2014年ブラジルワールドカップに挑んだ日本代表がパワープレイをするかどうかで話題になりましたよね。
ではこのパワープレイとは具体的にどのような戦術なのでしょうか?メリットとデメリットと共に見ていきましょう。
パワープレイとは?
サッカーにおけるパワープレイとは前線にロングボールを集中的に送り、繋ぎの部分をスキップして一気にゴールに迫る「攻撃戦術」のことです。
類似用語として昔のイングランドサッカーで多用されたひたすら前にロングボールを蹴りまくる「キックアンドラッシュ」があります。
残り時間が少ない試合終盤に採用されやすい戦術ですが、最初からパワープレイのみを狙って試合を進めるチームもあります。
パワープレイを行うメリットは?
サッカーでパワープレイを行うメリットは何と言ってもすぐにゴールの近くに迫れることです。
通常サッカーはディフェンスラインから細かくパスを繋ぎ、徐々にゴールに迫っていくのが定石ですよね。
しかしパワープレイだとゴール前にロングボールを一気に蹴りこむため一発で相手ゴール付近でのプレーが可能となります。
ゴールに一気に近づくためロングボールの競り合いにさえ勝てれば「万が一」が起こりやすく、戦力の劣るチームでも上位チーム相手に得点を取れることもありますね。
そのため格下のチームが採用することの多い戦術ですが、攻撃に掛かる時間が少ないので上位チームでも試合終盤、残り時間が少ないときに採用することがありますね。
パワープレイに必要な選手や能力は?
身長が高く体が強いプレーヤー
上記の通りパワープレイはロングボール主体の戦術なので身長が高い、もしくはフィジカルコンタクトに強いプレーヤーが必須になります。
それらの条件を満たすのは基本的にセンターフォワードであることが多いですが、センターバックも同様の長所を持つ選手が多いのでチームによってはセンターバックを前線に上げてパワープレイに対応させることも多いですね。
日本の選手では吉田麻也や田中マルクス闘莉王などのセンターバックがパワープレイ時に前線に残ってプレーをすることがあります。
ロングフィードが正確なプレーヤー
またロングボールを出す側の精度も非常に重要です。
パワープレイは比較的大雑把な戦術とはいえ、ロングフィードの精度が高いに越したことはありません。
フィードの精度が良ければ多少身長で劣っていたとしても競り勝ちできることも多いです。
またサイドからのアーリークロスなどもパワープレイでは重要ですね。
総じてロングフィードを出すことが多いセンターバックやサイドバック、アンカーのロングキックの質が大事になります。
スペースを上手く使えるプレーヤー
上記の通りパワープレイ時には身長が高く、フィジカルの強い選手が前線に配置されますが、ヘディング一発のみでゴールを陥れるのは簡単ではありません。
したがって高さのあるプレーヤーがヘディングで落としたボールを拾ってよりゴールに近い位置でシュートまで持ち込める選手もパワープレーでは重要になります。
そのためにはボールの落ち所、相手のマークの付き具合をしっかり判断して空いたスペースに入り込める能力を持った選手が必要になります。
日本代表だと香川真司や岡崎慎司といったプレーヤーがこういった長所を持っていますね。
パワープレイのデメリットは?
上記のようにパワープレイは一瞬でゴール前までボールを運べるのでハマれば非常に強力な戦術です。
では最初からパワープレイ気味の戦術で試合に臨めばいいのでは?と思ってしまいますが、パワープレイにはデメリットもあります。
パワープレイ最大のデメリットはその「決定率の低さ」です。
サッカーはロングボールをゴール前に送っただけで簡単にチャンスが作れるほど甘いスポーツではありません。
パワープレイ自体シンプルな攻撃なので相手のディフェンダーもロングボールを跳ね返すだけで対応できますからチャンスになることはそれほど多くないのです。
したがって最初からパワープレーをするのは効率がいいとは言えず、よほど戦力が劣っている場合や相手チームのセンターバックサイズが極端に小さい場合など限定された条件下でないと有効ではないと言えます。
なので後半ロスタイムなど本当に時間がない、攻撃を急ぎたいときのみパワープレイを行うチームが多いのです。
攻撃の効率を重視するバルセロナやマンチェスター・シティが一切パワープレイを行わないのもその証明ですね。
ハマれば悪い戦術ではないパワープレイ
とはいえ万が一を起こしたい下位チームや時間がない場合の攻撃においてパワープレイはハマれば試合をひっくり返すこともあります。
見栄えのいい攻撃とは言えませんが、パワフルなロングボールの攻防はそれはそれでサッカーの魅力の一部ではありますので試合終盤、身長の高い選手やセンターバックが前線に上がってきた場合は期待してもいいでしょう。