2016-2017シーズンのプレミアリーグはイタリアの名将アントニオ・コンテが率いたチェルシーが優勝しましたよね。
コンテが採用した3バックのフォーメーションはプレミアリーグに新たな流行を生み、上位チームから下位チームまで3バックのフォーメーションを採用するチームが激増しました。
この3バックのフォーメーションで非常に重要なポジションとなるのがサイドを担当する「ウイングバック」と呼ばれるポジションです。
この記事では再び脚光を浴びつつあるウイングバックとはどのような役割なのか、サイドバックとの違いと共に紹介したいと思います。
ウイングバックとは?
ウイングバックは3-5-2や3-4-3など3バックを採用したフォーメーションにおいてサイドを担当するポジションのことです。
3-5-2なら「5」の両サイド、3-4-3なら「4」の両サイドといった感じですね。
ポジション的にはサイドバックとサイドハーフの丁度中間のようなポジションになります。
ウイングバックとサイドバックの役割の違いは?
ウイングバックと似たようなポジションとしてはサイドバックというポジションがありますが、この2つの役割にはどのような違いがあるのでしょうか?
上記の通りウイングバックはサイドバックとサイドハーフの中間ポジションであるため、それら両方の役割を担うことになります。
つまりサイドを崩してからのクロスボールの供給、サイドの守備ですね。
このように文字だけで見るとウイングバックとサイドバックの本質的な役割は同じように見えます。
しかしウイングバックとサイドバックは全く同じ役割ではありません。
まずはスタートポジションです。
3バックにおけるウイングバックは4バックにおけるサイドバックに比べてより前のポジション、サイドハーフ気味に位置を取ります。
ウイングバックがいるフォーメーションの場合、最終ディフェンダーの位置には3人のディフェンダーがいるためウイングバックはサイドバックより前で攻撃に絡む機会が多く、攻撃的な色が強いと言えるでしょう。
サイドバック自体が最終ラインに組み込まれる4バックと、ウイングバックが必ずしも最終ラインに入る必要のない(戦術によるが)3バックでは役割が大きく異なります。
さらにサイドバックは後方から一気にスピードを活かすオーバーラップが特徴的ですが、ウイングバックはそれに加えて中盤付近でプレーする機会も多いためより有機的にパスコンビネーションなどを駆使する必要もありますね。
もちろん「バック」と名前がついているくらいなので守備も大事です。
このようにウイングバックは攻撃の時はサイドハーフやウイング、守備の際はサイドバックにならなくてはいけないとても難しい複雑な仕事なのです。
ウイングバックに必要な能力は?
スタミナ
上記の通りウイングバックはサイドバックより総合的な能力が求められるため選手に要求されるクオリティがたくさんあります。
まずはスタミナ。
ウイングバックはサイドの攻守を一手に引き受けるポジションであるため運動量がチーム内で最も多くなりがちなポジションです。
90分間を通して攻撃の際は前線へ、守備の際は猛ダッシュで自陣に戻る必要があります。スタミナのない選手がウイングバックをこなすことはできないでしょう。
実際に冒頭で記した2016-2017のチェルシー優勝は左ウイングバックのマルコス・アロンソ、右ウイングバックのヴィクター・モーゼスによる鬼のような運動量でもたらされたようなものです。
見ていて気の毒になるくらい走り倒していましたね。
パスセンス
ウイングバックは上記の通り状況によってミッドフィルダー然とした振る舞いもしなければなりません。
特に3バックのフォーメーションだとセンターバックに3人、ウイングバックに2人人員を取られているので油断すると中盤がスカスカになってしまいがちです。
そういった状況ではウイングバックはサイドミッドフィルダーとして中盤でのボール回しをアシストしてあげなくてはならないので適確なショートパスの精度、サイドチェンジの精度などパスセンスも非常に重要になってきます。
もちろん攻撃の際はクロスボールやロングフィードなども頻繁に出しますね。
守備能力とスピード
ウイングバックを採用したフォーメーションだと基本的に最初からサイドに張っている選手はウイングバックの選手だけです。
したがって攻め込まれた際はサイドでの一対一に強さを発揮しなくてはなりません。
さらに3バックフォーメーションは3バックの両ストッパーの横と高い位置を取るウイングバック後ろのスペースがどうしても空きがちなのでここをカバーするためにスピードも必要ですね。
ウイングバック採用時の注意点は?
近年再び3バックとウイングバックを採用したフォーメーションが流行しているのは紹介してきた通りですが、成功しているチームは数えるほどです。
理由としてはもちろん上記の通りウイングバックに求められるハードルが高く、ウイングバックの仕事を完璧にこなせる人材が少ないというのもありますが、構造的な難しさもあります。
その構造的な難しさとは「5バックになってしまいがち」という点です。
ウイングバックのポジションに慣れていない選手の多くはサイドバックに近い感覚でプレーすることが多いです。
するとどうなるかというと相手に攻められた際にズルズルと後退してしまい、結果極めて守備的な5バックになってしまいやすいのです。
奪っていざ攻撃という時も初動が遅れてしまいますしね。
5バックになってしまってはせっかくの有機的なサイドポジション、ウイングバックのメリットが無くなってしまうどころか中盤に大きなスペースができてしまい、そこを責められ続けるという悪循環に陥ります。
したがってウイングバックを採用するなら逆サイドまで展開を見通し、つるべの動きを意識して時には高い位置から守備を行うなど戦術理解度の高さも選手には求められます。
ウイングバックは難しいが・・・
紹介してきた通りウイングバックというポジションは自由度が高いポジションですが、その分タスクを完璧にこなすのは非常に難しいポジションとなっています。
しかしサイドの攻守を一人で司る完璧なウイングバックがチームにいれば他の選手、チームにとって利益は計り知れません。
3バックを採用するチームの試合を見る時はウイングバックの攻守における貢献を見るといいでしょう。